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地方会での発表に参加する際、私が徹底して行ったのが「質問をする」ということです。ただ質問をするだけでなく、戦略的かつ意図的な質問を繰り返すことで、自分の存在感を高め、会場全体にとって有益な議論を生むことを目指しました。その具体的な取り組みをご紹介します。
1. 専門領域に関連のある分野への質問は必ず行う
地方会では、自分の専門領域に関連する発表があれば、必ず質問をしました。質問を通じて、発表者との意見交換を行うだけでなく、オーディエンス全体の理解を深め、議論の幅を広げることを意識していました。こうした行動が繰り返されるうちに、自然と発表者や聞き手との間に信頼関係が築かれるようになりました。
2. 質問の質を高める工夫:全体像と詳細のバランスを意識する
質問をする際には、発表全体の構造や目的を明らかにすることを意識しつつ、NLPでいう『チャンクサイズ(情報の具体性・抽象性)』を調整しました。具体的には、以下のように質問を工夫しました。
• 全体像を把握させる質問
詳細情報が多すぎて病態や治療法の全体像が掴めない場合、情報を抽象化し、大きな構造に目を向けさせる質問を投げかけました。
例:「この治療法は全体的な診療フローの中でどのように位置付けられるのでしょうか?」
• 詳細に目を向けさせる質問
逆に、大雑把な情報ばかりで細部が曖昧な場合には、具体的な部分に目を向けさせる質問をしました。
例:「具体的には、どの患者層で有効性が確認されたのでしょうか?」
こうして、議論が全体像と詳細のバランスを取りながら進むように導くことで、発表者や聞き手の理解を深めることができました。
3. 発表者・オーディエンス・自分、それぞれの視点で質問を考える
質問をする際には、NLPの『パーセプチュアルポジション(知覚位置)』の考え方を活用し、以下の視点を切り替えることを意識しました。 ※パーセプチュアルポジションについては『「地方会」は名刺代わり!存在感を高める報告のコツ』で説明しています。
• 発表者の視点
発表者がまだ気づいていない点や、新たな視点・課題に気づけるような質問を投げかける。
• オーディエンスの視点
聞き手が知りたいことや、まだ気づいていない疑問を代弁し、全体にとって価値のある質問をする。
• 自分の視点
自分の専門性を活かし、発表者やオーディエンスに伝えたいことを考えた質問をする。
これらの視点を持ちながら質問を組み立てることで、発表者・オーディエンス・自分自身の学びを最大化することができました。
4. 質問を重ねることで名前と顔を覚えてもらう
地方会で質問を始めた当初、私はまだ30代前半の若手医師で、名前も顔も知られていない状態でした。座長の先生から発言を途中で切られることもありましたが、それでも怯むことなく、毎回積極的に質問を続けました。
その結果、地方会における私の存在感が徐々に高まり、熱海病院を去る頃には県内の多くの医療関係者に名前と顔を覚えていただけるようになりました。地方会での質問は、単に目立つための行動ではなく、自分を周囲に認知してもらい、信頼を築くための重要な手段だったのです。
質問が生む信頼と未来
地方会での「質問しまくり戦術」は、自分の専門性を深めるだけでなく、信頼関係を築き、議論の質を高める行動でした。NLPのパーセプチュアルポジションやチャンクサイズを意識することで、質問の質が向上し、発表者・オーディエンス・自分にとって価値ある場を作ることができました。 現在、某大学小児科教授になっている先生からは、当時、『強敵と書いて、”とも”と読む』と言われ、「ぜひ、一緒に仕事がしたい」とも言われました。
質問というシンプルな行動が、自分の未来を切り開く大きな力になることを、私は地方会での経験を通じて確信しました。
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