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NLPとは?
NLP(Neuro-Linguistic Programming、神経言語プログラミング)は、1970年代に心理学者リチャード・バンドラーと言語学者ジョン・グリンダーによって開発された、心理学的なコミュニケーションと行動変容の手法です。「神経(Neuro)」「言語(Linguistic)」「プログラミング(Programming)」という3つの要素から成り立ち、人間の思考(神経)、言葉(言語)、行動(プログラミング)の相互作用を理解し、それを効果的に活用する方法論です。
NLPは、心理療法や教育、ビジネスなど幅広い分野で応用されており、短時間で信頼関係を築いたり、問題解決を促進する手法として高く評価されています。診療現場においても、患者やスタッフとのコミュニケーションの質を大きく向上させる力を持っています。
NLPの具体的な応用例:診療現場での実践
NLPの技法は、診療現場のさまざまな場面で活用できます。以下にいくつかの具体例を挙げます:
相手と無意識レベルの深い信頼関係を築く(ラポール形成)
短時間で相手と深い信頼関係を築けるNLPのスキルは、いわゆる“クレーマー”と呼ばれる患者や家族との会話に特に有効です。たとえば、表面的な言葉の背後に隠された「本当に望んでいること(肯定的意図)」を引き出すことで、相手の態度が変わり、いわゆる“クレーマー”がクレーマーでなくなる場面も多々あります。
患者の無意識レベルの変化を促す(サブモダリティの書き換え)
過食症の女の子が夜中に家を抜け出してコンビニでアイスを買うという行動に悩んでいたケースがあります。このような場合、NLPの「サブモダリティ」と呼ばれる五感の細かい情報を理解し、それを調整することで、たった数分間で「アイスを食べなくても大丈夫」という状態を作ることができました。
患者のあいまいな思考や言葉を具体化する(メタモデル)
患者が曖昧な言葉で不安や悩みを語ることはよくあります。その際、NLPの「メタモデル」という技法を使って質問を投げかけ、具体化を促すことで、患者の心のモヤモヤが晴れることがあります。このプロセスにより、「先生と話すと元気になる」と言われることが多くなりました。
私がNLPを学び始めた経緯
私がNLPを知ったのは2015年のことです。第118回日本小児科学会学術集会でたまたま手にしたチラシがきっかけでした。当時、妻と娘の関係が悪化しており、家庭内でのコミュニケーションに悩んでいた時期でした。最初は妻にNLPを学ばせようと考え、自分は後から学ぶつもりでした。
その後、2018年にスポーツドクター講習会でコーチングに関する講義を受け、コーチングにも興味を持つようになりました。当時、息子が不登校で、「息子を何とかしたい」という思いが私を突き動かしていました。不登校の息子には本来カウンセリングが必要だったのですが、コーチングとカウンセリングの違いもよく分からないまま、子供に適したコーチングを探していました。
さらに、職場でのパワハラ体験も、私がコーチングを学びたいと思う大きなきっかけになりました。過去に職場でパワハラを受けたことで、人間関係のトラブルがどれだけ業務や精神に悪影響を及ぼすかを痛感していました。そんな中、「自分でコーチングスキルを身につければ、職場の環境も家族の問題も改善できるのではないか」と考えたのです。
そんな中、たまたま見つけた「NLPコーチング」の講座では、NLPとコーチングを同時に学べることがわかり、これが私の本格的な学びの始まりとなりました。診療現場の問題解決に役立つだけでなく、職場や家庭でのコミュニケーションにも新たな可能性が開かれた瞬間でした。
NLPがもたらした変化
NLPを学ぶことで、診療現場や職場のコミュニケーションの質が劇的に変わりました。スタッフの目標設定や1on1ミーティングにはコーチングスキルを取り入れ、日常の会議や打ち合わせではNLPの技法を活用することで、短時間で結論に至る場面が増えました。
また、職場でのパワハラ問題に対しても、NLPを活用することで、問題の本質に迫り、解決の糸口を見つけられるようになりました。現在では、スタッフの成長を支援し、診療チーム全体の質を向上させる手段として、NLPは欠かせないものとなっています。
家族の関係もNLPを学ぶことで変化を感じています。今までは物事を善か悪かの2択で考えるところがあり、それを子供たちに押し付けているところがありました。それをXでもYでもないZの答えを探したり、「Xという考えもYという考えも、そういう考えなんだね」と相手の世界観を尊重することができるようになりました。一番感じているのは息子のようで「父ちゃんはNLPを習って変わった、昔だったら...」というような話をよくしてくれるようになりました。
NLPが教えてくれる新しい可能性と成功の秘訣
NLP(神経言語プログラミング)は、患者さんやスタッフとの信頼関係を深めるだけでなく、自分自身の行動や思考を改善し、新たな視点を得るための強力なツールです。本書では、私がNLPを通じて学んだスキルと、それを診療現場でどのように活用してきたかを具体的にお伝えします。また、NLPを学ぶ前に私が「日本全国から患者が集まる診療チーム」を作るために行っていた取り組みを、NLPの視点で解説していきます。これにより、NLPが持つ可能性をあなた自身に感じ取っていただけるはずです。
さらに、大切なことを一つお伝えします。それは、柔軟な思考を持ちながら「チャンクアップ」と「チャンクダウン」を使いこなすことです。チャンクアップとは物事を抽象化して本質を見つけること、チャンクダウンとはそれを詳細化・具体化して自分の状況に応用することを指します。
この本に書いてある内容が、そのままあなたに当てはまるとは限りません。その場合は、まずチャンクアップして、「要するにここで言いたいことは●●●ということだよね」と本質を見つけてみてください。そして次に、「じゃあ、自分に当てはめるとすると、■■■もできるし、▼▼▼もできるし、◆◆◆もできるよね」と、あなた自身の状況に合った解決策を具体化してみてください。
柔軟に「チャンクアップ」と「チャンクダウン」を行い、抽象と具体を行き来する思考法を身につけることで、あなた自身の課題に最適な答えを見つけられるはずです。この柔軟な思考こそが、成功への鍵であり、診療現場や日常生活における問題解決力を大きく向上させてくれます。
最後に、本書を通じてNLPの基本を理解し、あなた自身が新しい一歩を踏み出せるきっかけを得ることを心から願っています。
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