医療現場では日々、多くのタスクに直面し、その中で適切な優先順位をつけることが必要不可欠です。しかし、忙しさに流されるままに対応していると、目の前の緊急対応に追われ、結果として本当に重要な成長機会や自己研鑽のための時間が奪われてしまうことがあります。優先順位を意識的に管理することで、業務に追われる日々から抜け出し、戦略的かつ効果的に時間を使えるようになります。
医療従事者が自らの時間をしっかりと管理することで、仕事の質を高め、より良い医療サービスを提供できるだけでなく、過労やストレスの軽減にもつながります。たとえば、普段の業務でどうしても後回しにされがちな自己成長や、患者との信頼関係を築くためのコミュニケーションに、意識的に時間を確保することができます。これは、医療従事者にとっても、患者にとっても長期的にメリットが大きく、結果として、医療の質の向上にも直結するのです。
また、やるべきことと手放すべきことを明確にすることで、他者に依頼できる業務を見極めることができ、無駄を省いた働き方が実現できます。これにより、医療現場全体の効率も向上し、忙しさに押し流されることなく、中長期的な組織の発展や個人の成長にも貢献することが可能となります。
時間管理のマトリックスとは?
~ スティーブン・コヴィー博士『七つの習慣』に学ぶ ~
時間管理のマトリックスは、スティーブン・コヴィー博士の著書『7つの習慣』で提唱された、タスクや活動の優先順位を見極めるためのフレームワークです。コヴィー博士は、このマトリックスを通じて、緊急度や重要度に基づいて時間を効果的に使う方法を説いています。これは医療従事者にも役立つ考え方であり、日々の緊急対応と長期的な目標のバランスを取るために活用されています。
時間管理のマトリックスは、タスクを4つの領域に分けて評価します。
第一領域は「緊急かつ重要」なもので、すぐに対応しなければならないタスクが含まれます。
第二領域は「緊急ではないが重要」なタスクです。ここには、自己研鑽やスキルアップ、患者との信頼関係を築くための時間、健康管理やストレス対策などが含まれます。
第三領域は「緊急だが重要ではない」タスクで、これには会議や電話対応、雑務などが含まれます。
最後に、第四領域は「緊急でも重要でもない」タスクです。たとえば、無駄なインターネット閲覧や、長時間の雑談などです。この領域の活動を最小限にすることで、医療従事者はエネルギーを消耗せず、他の重要な業務に集中できる環境を作ることができます。
『7つの習慣』の中で、コヴィー博士は、特に第二領域のタスクを重視するよう強く推奨しています。なぜなら、第二領域の活動が人々にとって最も大きな価値を生み、目先の問題だけでなく、持続的な成長や質の向上につながるからです。医療従事者が日々の業務の中で第二領域のタスクを優先的に取り入れることにより、患者との関係が深まると同時に、自己の成長と組織全体の発展にも寄与することができます。
このマトリックスの活用により、医療従事者は、単に目の前のタスクを処理するだけでなく、長期的に見て効果的で持続可能な働き方を身につけることが可能になります。
医療現場での時間管理のマトリックスの活用とは?
第一領域
医療の現場では、患者の急変や手術の準備などがこの領域に入ります。これらの活動は医療従事者にとって日常的であり、目の前の「緊急」な問題に対応する力は非常に大切です。しかし、常にこの領域のタスクに追われていると、燃え尽きや過労のリスクが高まります。 第二領域
医療従事者にとって、この領域に時間を割くことは非常に価値が高く、長期的な成長や医療の質の向上に貢献します。コヴィー博士は、この領域の活動に多くの時間を確保することが、真の効率と効果を生み出すと強調しています。特に医療業務においては、急な患者対応だけに追われるのではなく、戦略的な学びや自己管理の時間を確保することが、心身の安定やキャリアの持続性を保つために欠かせません。
第三領域
医療現場でも会議や連絡調整などが求められることが多く、これらは一見重要に思えますが、必ずしも本来の業務に直結しない場合があります。この領域に時間をかけすぎると、本当に重要な仕事を後回しにしてしまいがちです。そのため、医療従事者がこの象限のタスクを見極め、必要に応じて他の人に任せたり、効果的な調整を図ることが必要です。
第四領域
医療従事者の忙しい日常業務にはほとんど現れないかもしれませんが、無意識のうちに時間を奪う要因として存在します。また、仕事以外の生活時間を振り返ると意外と多いかもしれません。
忙しいを言い訳にしない人がやっている “ ブロッキング ” とは?
ブロッキングの概念も、効果的な時間管理において重要です。ブロッキングとは、特定のタスクに専念するために時間をあらかじめ確保することを指します。たとえば、第Ⅱ領域の重要な活動に対して、日や週の特定の時間帯をあらかじめブロックすることで、計画的に重要なタスクを遂行することができます。これにより、他の緊急な用事に時間を取られることを防ぎ、集中力を高めることができます。
特に管理職であれば、日常の中でどのタスクに時間を費やすべきかを明確にし、より効果的に目標を達成するというような部下へのサポートが可能です。また、上司自身もこのマトリックスとブロッキングを活用して、患者への関わりと部下への支援に集中できる時間を確保し、自分自身の成長とバランスを維持できます。
医療現場では、緊急対応(第Ⅰ領域)が多くを占めますが、第Ⅱ領域での研修、患者教育、自己研鑽にブロッキングを用いて時間を確保することで、長期的なキャリアの発展や医療サービスの質の向上が期待できます。また、日々の業務を見直し、第Ⅲ領域と第Ⅳ領域の活動を削減することで、効率的な時間管理が可能になり、患者ケアの質をさらに高めることができます。
時間管理を制限している価値観やビリーフとは?
時間を効果的にブロッキングして第二領域(緊急ではないが重要な領域)を確保できない人の中には、自分自身の「思い込み」が無意識のうちに制限をかけていることが考えられます。この「思い込み」とは、例えば「常に周りの期待に応えなければならない」や「自分のために時間を使うことはわがままだ」といった信念のことで、こうした考え方が行動を制限し、第二領域の活動を十分に取れなくさせる原因になることがあります。
NLP(神経言語プログラミング)では、この「思い込み」を「ビリーフ」と呼びます。ビリーフは、私たちの無意識の行動や反応に深く影響を与えるもので、日本語では信念ともいわれます。ビリーフは価値観とも関連し、私たちの行動基準を形成します。
医療現場の厳しい環境にいると、「患者優先」、「利他」という強い価値観が重視されやすく、「患者を最優先にすることが当然だ」「自分の成長よりもチームのために働かなければならない」というようなビリーフが第二領域に必要な時間を確保することを妨げることもあります。
また、「時間を自分のために使うことは自己中心的だ」と感じるビリーフを持っていると、自己研鑽や健康管理のための活動を後回しにしてしまう傾向が見られます。しかし、このような考え方を持ち続けると、自分の成長機会や、医療の質向上のための重要な活動を犠牲にしてしまう可能性が高まります。
ビリーフに良い悪いはありませんが、このようなビリーフがあなたに制限をかけているのでれば、それに気づき、働き方や時間管理における価値観を再評価することが、第二領域を優先し、長期的な成長と安定を実現するための第一歩です。何よりもそれが患者さんやチームの成長にも繋がるのです。
自分の価値観とビリーフを見直し、どの領域に時間をかけるべきかを明確にすることで、単に緊急のタスクに追われるのではなく、より戦略的で持続可能な働き方を築くことができるでしょう。
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